岩手県 「33地域で高波浸水の恐れ 県が初の被害想定図」

33地域で高波浸水の恐れ 県が初の被害想定図

岩手日報110513】県は12日、東日本大震災で被災した沿岸自治体に、高波や高潮に伴う浸水被害想定図を初めて示した。シミュレーション対象の沿岸12市町村の計 38地域中、防潮堤が無事だった場所などを除き33地域で浸水の恐れがあるとの内容。市町村が建築活動を制限する危険区域指定を行う際の参考として提示し た。建築制限には住民感情への配慮など懸念もあり、県の説明を受け各首長の反応は分かれた。

 県によると、今回の想定図はシミュレーションの中間結果。同日は宮古市以南の6市町に提示した。

 震災で対象域全体が30センチ地盤沈下したと仮定し、それぞれ5、10、30年に1回の確率で起きる可能性がある高潮・高波被害を想定。例えば宮古市では2~4メートル、30年スパンでは5メートル規模の高潮・高波もあり得るとし、浸水想定域を航空写真上に線で示した。

 県は市町村が安全を確保しながら復興計画を進めるため各自治体に条例で災害危険区域を指定、家屋などの建築を制限する手法を示している。想定図は危険区域を定める際の参考とした。想定図の完全版は来月示す予定。

 建築制限をめぐり、想定図を見た各首長の反応はさまざまだ。宮古市の山本正徳市長は「がれきが片付いていない所に住居を構える市民はいない」との表現で、条例化せず自粛要請にとどめる考えを重ねて示した。

 釜石市の野田武則市長は「現時点では条例化は必要ないが、県が再度示す情報を基に判断する」との姿勢で、陸前高田市の戸羽太市長は「条例化は区域や期間設定が難しい」と実現を困難視する。

 山田町の沼崎喜一町長は「町復興ビジョンを示すのが先」、大槌町の東梅政昭副町長も「(想定区域を)町民に説明する必要があり、庁内でも検討したい」と述べるにとどめた。

 戸田公明大船渡市長は「浸水域には家を建てず、集団移転という形で進めたい」とあらためて建築制限に前向きな姿勢を強調した。

 県は16日に岩泉町以北の6市町村に示す。

(2011/05/13)