宮城県 「県復興計画原案、全戸に太陽光発電 漁港、農地を大規模化」

毎日新聞110602】東日本大震災からの復興策をまとめた「県震災復興計画」の原案で、県は居住地の高台移転や水産業の協業化や民間参入、農業の集約化を明確に打ち出した。復興住宅の全戸への太陽光発電装置の整備など、有識者による県震災復興会議での提案も盛り込んだ。

 水産業では、漁港を3分の1程度に集約・再編すると明記。拠点となる地域の漁港機能を優先的に復旧するとした。また、公的資金や民間資本を活用しながら、家族経営など零細な経営組織を効率的で安定した生産基盤に改善する。一方で、村井嘉浩知事が提唱する民間企業の参入を促す「水産業復興特区」の創設は「検討すべき課題」にとどめた。

 農業は、農地を集約して経営の大規模化を進める。地盤沈下で復旧が困難な農地については、国が土地を買い上げるよう求め、「バッファーゾーン」(緩衝地帯)となる緑地公園としての整備を推進する。また、水産業と同様に民間企業の参入を強調し、流通や観光など他産業のノウハウを取り込んで付加価値を高める。

 自然エネルギーの導入にも積極的な姿勢を示し「エコタウン」の形成を掲げた。県震災復興会議で小宮山宏・三菱総合研究所理事長が提案した太陽光発電設備の整備のほか、燃料電池や蓄電池を備えた「エネルギーハウス」の普及促進を図る。

 県は同会議の意見を反映させ、8月までに最終案を策定し、9月定例県議会に提案する方針。

 

◇原案に盛り込まれた「復興のポイント」

 1 災害に強い街づくり 沿岸部で高台移転▽職住分離▽津波への多重防御を進める。

 2 水産業の復興 漁港を集約再編する。沿岸漁業・養殖業の振興に向け、協業化の促進や民間    

   資本の活用など新たな経営組織の導入を推進する。

 3 先進的な農林業の構築 農地の集約化や経営の大規模化を進める。稲作から施設園芸への転  

   換などで、農業産出額の向上を図る。

 4 ものづくり産業の早期復興 自動車関連産業の更なる誘致。環境・医療など次代を担う新産 

   業を集積する。

 5 観光の再生 風評被害や観光自粛ムードを払拭(ふっしょく)する。東北各県と連携した広    

   域観光ルートを再構築する。

 6 保健・医療・福祉の再構築 ICT(情報通信技術)を活用して地域医療連携システムを構

   築する。

 7 エコタウンの形成 再生可能エネルギーを活用し、環境に配慮した街づくりを推進する。

 8 災害に強い県土・国土づくりの推進 広域的な防災拠点を整備し、国の災害対策本部など政

   府の危機管理機能の整備を国に提言する。

 9 人材の育成 心のケアと防災教育を充実させる。

10 復興財源、制度、組織の構築 被災地で集団移転の円滑化などを促進する「東日本復興特

   区」を創設する。被災県、被災市町村の枠を超えた連携体制を確立する。