原発賠償特別法 明記せず 復興構想会議が提言 事故、国の責任で収束

福島民報110626】政府の東日本大震災復興構想会議(議長・五百旗頭真=いおきべ・まこと=防衛大学校長)は25日、「復興への提言」を決定し、菅直人首相に答申した。福島県が求めてきた、東京電力福島第一原発事故の損害賠償と地域再生に関する特別法制定は明確な形で打ち出されず、原発災害に絞った国と県の協議の場の設置が盛り込まれたのにとどまった。原発事故からの復興については内容の4分の1を割き、国の責任で収束させるよう明記した。県内での再生可能エネルギー関連の産業創出など原発事故からの復興策を示した。

 提言のうち原子力災害に対する本県意見の主な反映状況は【表】の通り。

 損害賠償と地域再生についての特別法は法整備を含め国が責任を持ち取り組むべきという内容となった。県は事故の被災者に対し広く、確実に賠償が行われることを狙い特別法にこだわった。しかし、要求が受け入れられず、設置される見通しとなった国との協議の場で引き続き特別法制定を求めていく。

 さらに、県は全額、国庫負担による復旧・復興の基金造成、復興財源の確保も求めてきた。しかし、基金については県の財政負担に含みを持たせた。交付税は新たな制度の創設に踏み込まず、「増額する」との内容にとどまった。

 提言では、全4章のうち1章が本県と深く関わる原子力災害をテーマとしている。原発事故収束は国が責任を負うべきと明記。被災者や被災自治体への支援、放射線量に関する全国統一の方針・基準の確立、土壌汚染への対応、住民の健康維持施策の推進、復興に向けた取り組みの推進を盛り込んだ。さらに、放射性物質の除染を進め、医療産業や再生可能エネルギー関連産業を本県に集積するよう取り組みを促している。

 復興会議では当初、原発事故について会議の議題から外す方針が示された。しかし、本県が「原発事故の収束が復興の大前提」と強く主張してきた。

 県の野崎洋一企画調整部長は「復興に向けたスタートラインに立った。特別法制定、財政支援は不十分な点があり、引き続き国に要請する」と述べた。