全国知事会議:原発再開で対立「この夏乗り切れるか」「福島を収束させてから」

毎日新聞110713】全国知事会議が12日、秋田市のホテルで2日間の日程で始まった。会議では、東京電力福島第1原発事故への対応について「場当たり的な対応に終始し、国民の不信感はかつてなく高まっている」として、菅直人首相が事故の経緯について説明責任を果たすことなどを求める緊急提言を、近く政府に行うことが決まった。一方、原発のあり方を巡っては、知事の意見の違いも浮き彫りとなった。【中山裕司、野原寛史、坂本太郎】

 緊急提言は、原発事故の徹底した調査や検証に加え、原発の安全基準の見直しや防災対策重点地域(EPZ)の範囲拡大、事故に関する情報の開示などを求めた。また、再生可能エネルギー固定価格買い取り法案の早期成立など、代替エネルギーの開発にも速やかに取り組むよう求めた。

 会議では原発の再稼働を巡り、知事らの主張が対立した。九州電力玄海原発の再稼働を巡る政府内の混乱に翻弄(ほんろう)された佐賀県の古川康知事は「誰を信じていいのか分からない。菅首相がこの夏は再稼働なしで乗り切れるというなら、正面切って言えばいい」と怒りをあらわにした。石川県の谷本正憲知事も「ストレステスト(耐性試験)を導入するなら、首相自ら地元を説得する覚悟でやらなければ解決の道筋は見えない」と首相を批判した。一方、福島第1原発を抱える福島県の佐藤雄平知事は「福島第1原発をしっかり収束させてから再稼働の話が出るべきだ」と、早急な再稼働に不快感を示した。

 大阪府の橋下徹知事は「(再稼働を止めれば)壮大な社会実験ができる。この国は原発何基までで(電力供給が)耐えられるか、実証データを見ることが重要だ」と発言。古川知事が「再稼働してもいいのに『社会実験するから(再稼働を)止める判断をしろ』と言われるとつらい」と反論する場面もあった。

 再生可能エネルギーの推進など、中長期的なエネルギー政策に関しても活発な意見交換がなされた。山形県の吉村美栄子知事(欠席)と滋賀県の嘉田由紀子知事は共同で、原発への依存から卒業する「卒原発」を提唱。北海道の高橋はるみ知事も「自然エネルギー拡大のためにできることをするのは大賛成」と述べた。一方、四国電力伊方原発を抱える愛媛県の中村時広知事は「『卒原発』という新しい言葉に違和感がある」と発言。広島県の湯崎英彦知事は「菅首相は政局のために『脱原発』を打ち出すのではないか」と懸念を示した。

 知事会議では、全国知事会が震災に伴う被災者生活再建支援基金に342億円を拠出し、拠出額を使い切った場合に備えて通常災害に対する同基金にも538億円を積み立てることも了承された。