「都会みたいな仮設住宅」・・・進まぬ災害弱者把握

仮設住宅の防火訓練で車いすを押して避難する夫婦(2日、岩手県宮古市田老で)
仮設住宅の防火訓練で車いすを押して避難する夫婦(2日、岩手県宮古市田老で)

読売新聞111005】東日本大震災の被災地では火事が多発する冬を控えて、地元消防団などが仮設住宅に暮らす高齢者らの把握に手間取っている。

 避難時の手助けが必要にもかかわらず、住民間のつながりが希薄で、公的機関からの情報提供が少ないためだ。

 「震災前は家族構成はもちろん、台所や寝室の場所まで知っていた。今は誰がどこに入居しているのかさえわからない」。岩手県宮古市田老地区の仮設住宅に住む消防団員、田中和七さん(57)は話す。仮設住宅約400戸には複数の地区から移り住んだ住民が入り交じって暮らし、ご近所と離ればなれになった高齢者は「自分がすぐ避難できないことを知っている人がいない」と不安を訴える。

 独り暮らしの山本能子さん(80)は、ひざが悪く、外出時にはカートが手放せない。「仮設は、どこに誰がいるか分からず都会みたい」。

 災害弱者とされる人々については、「災害時要援護者」として各自治体の福祉部門が把握することになっている。

 宮古市では、震災後の仮設入居者について全戸訪問して調べるなど情報収集中。必要があれば情報は消防団にも提供する方針だが、「個人情報の取り扱いについて協議できていない」として、現状では未提供のままだ。

 そのため、避難訓練を通じて災害弱者を独自に把握しようとするなどの動きもある。今月2日、宮古市田老地区の約240世帯を対象に防火訓練が行われ、消防署員と消防団員が避難誘導をしながら、高齢者ら要援護者の人数や所在の把握に努めた。

 岩手県大船渡市大船渡町の地ノ森仮設住宅では、全71戸190人が加入する自主防災組織が9月に発足。各棟の班長を中心に要援護者の把握に乗り出した。自主防災組織の副会長、西山謙一さん(74)は「密集した仮設では火事が一番怖い。津波で助かったのだから、これ以上犠牲を出さないためにも災害弱者の把握は重要」と話す。

 仙台市では、保健師らが仮設住宅を訪ねて要援護者に関する情報も収集。民生委員にも伝えているが、個人情報保護の観点から自治会などとの情報共有は認められていないといい、緊急時への不安が残る。

 ◆災害時要援護者=災害時に一人で安全な場所に避難するのが難しく、支援が必要な高齢者、障害者、乳幼児、妊婦など。優先的に支援するため、政府は2005年にまとめた指針に基づき、全国市区町村に対し、対象者を把握して支援方針を定めるよう求めている。