千葉県 「戸建て被害8000世帯 浦安再興・液状化との闘い(上)」

戸建て被害8000世帯 浦安再興・液状化との闘い(上)

液状化被害で傾いた家を補修する工事(千葉県浦安市)
液状化被害で傾いた家を補修する工事(千葉県浦安市)

日本経済新聞電子版111129

修復追いつかず「1年待ち」

 

 不動産業界がこぞって注目する東京都江東区の超高層マンション(地上52階建て、600戸)の第1期分譲が12月に始まる。東日本大震災後、初めて販売される湾岸の超高層物件。販売元の野村不動産は当初の5月を延期し、液状化対策や防災設備の拡充に取り組んだ。

 

マンション堅調

 モデルルームを見学した共働きの30代夫婦は「不安解消とはいかないが、利便性には代え難い」。坪(3.3平方メートル)単価約240万円で中心価格帯は5000万円台。震災前の周辺相場と比べた割安感もあり、モデルルームに約3000組が訪れた。「のど元過ぎれば……」との見方もあろうが、売り手の懸念はもっぱら雲行きの怪しい景気にあるようだ。


 湾岸物件の人気回復の兆しは浦安市のマンション事情からも読み取れる。地場の不動産会社、明和地所(浦安市)の今泉太爾社長によると、仲介取引の落ち込みは昨年の1割ほど。売却も「定年を機に古里へ戻るから」といった震災と関係のない理由がほとんどだ。マンションで目立った液状化被害が起きていないことが堅調な取引を支える。価格の下落幅は震災前の1割。その半分は景気の低迷要因との分析だ。


 だがマンションの堅調と裏腹に8000世帯以上の被害を出した戸建ての事情はよくない。相場はじわじわと下げ、景気要因を加えて2割落ち込んだ。傾いた家の暮らしで本人や家族に目まいや頭痛の変調が現れ、市外にマンションやアパートを借りる人が後を絶たない。分譲主の大手不動産会社に損害賠償を求める集団訴訟の動きもある。


 先例のない戸建て被害で住宅会社にすら正確な情報がなかった。一時は「修復にかかる費用は500万円以上」との話が一人歩き。だが工法によれば国や県、市の支援金で賄える「300万円程度」で修復できると分かって、二の足を踏んでいた人が修復に動く例が急増している。


若者目立つ転出

 明和地所では扱い件数の4割が倍額を払い、液状化対策効果が高い工法を選ぶ。どこの業者も注文をさばきれず「予約は1年待ち」との声もある。住宅街の工事現場では関西方面のナンバーを付けた応援業者のトラックも見かける。


 人口16万人の浦安市は臨海部を埋め立て、市域を拡大してきた。4~10月の人口は微減だが、7カ月連続で転出者が転入者を上回る「市政初の事態」(総務課)。20~30歳の傾向が顕著だ。「3年間」を掲げた市の復興計画の行方次第では成長路線の歩みを自ら止めかねない。


 地元の明海大を加えた産官学の街づくりが来春にも臨海部の新町地区で動き出す。分譲計画の見直しを迫られていた住宅会社が垣根を越えて協力。手持ちの用地を地盤改良し、太陽光発電などを整備する。松崎秀樹市長は「災害に強い街を目指す」と話す。


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 調査委の中間報告を受けて、次の焦点は液状化対策などに移る。復興のつち音が聞こえ始めた町の姿、住民の表情を紹介する。