千葉県 「放射線 宙に浮く焼却灰保管」

県が提案した焼却灰保管の候補地=手賀沼終末処理場
県が提案した焼却灰保管の候補地=手賀沼終末処理場

朝日新聞120115】東葛地域の清掃施設から出た放射性物質を含む焼却灰の保管をめぐり、協議が難航している。県は手賀沼終末処理場に一時的に保管することを提案したが、地元の我孫子、印西両市が猛反発し、宙に浮いている。柏市で一部の清掃施設が停止するなど生活への影響も出かねないが、調整役は見当たらない。

◆地元反対「なぜ、よその灰を」

 「議会が全会一致で受け入れ拒否を可決している」「住民の気持ちを考えると受け入れられない」

 焼却灰保管をめぐり、5日に柏市役所で非公開であった県と関係副市

長との会合。関係者によると、県が受け入れ先の候補に挙げた県下水道公社の施設、手賀沼終末処理場のある我孫子市と印西市は反対の姿勢を明確にしたという。

 我孫子市の清掃施設から出る焼却灰の放射性セシウムは国の基準を下回る。ある市議はブログで「よその灰をなぜ引き受けなければならないのか。近くに高校もあるのに」。印西市の幹部も「現地で座り込みをしようと思った」と言う。

 だが、たまり続ける焼却灰は市民生活に影響を及ぼしかねない。柏市が稼働を停止した南部クリーンセンターは、焼却灰の圧縮機能で、放射性物質も濃縮してしまう。灰を詰めたドラム缶は千本を超え、地下室などはほぼ満杯だ。

 1月末に満杯が近づいている流山市は、その直後から約3週間かけて定期点検を行う予定だ。担当者は「その間に処分先のメドがたてば光明が見える。(県案に)理解をえられればよいのだが……」。

 候補となった手賀沼終末処理場は我孫子市と印西市にまたがる。すでに下水処理で生じた放射性焼却灰約780トンを保管している。敷地内にテントを建てれば、各施設から出る約1年分の量の灰を保管できる。

 反対する2市にも弱みはある。我孫子市議会が受け入れ反対の決議をした理由の一つが、ごみの自区内処理の原則。だが、同市の施設から出る焼却灰は埼玉と茨城の民間業者に委託していて、決議とは矛盾する処理をしているのが実情だ。

 さらに現在、同市は柏市と、ごみ焼却施設の共同建て替えを検討している。独自処理を続ければ、規模の小さな我孫子市の方が負担感は大きくなる。ベテラン市議は「手をさしのべなくていいのか」と悩む。

 印西市では事業組合の清掃施設に移転・建て替え計画があり、費用面で市民から反発が出ている。焼却灰を受け入れれば反発が高まりかねず、7月の市長選への影響も懸念される。

◆県幹部「ボールは向こうに」

 各市の思惑に対し、森田健作知事は12日の会見で「色々事情はあると思うが、5市が話し合って協力を。あまり時間はない」と述べるにとどめ、明確な方針は示さなかった。

 ある県幹部は「県から新たな用地案を示すつもりはない。4市1組合から県有地の提供を求められたので案を出した。受けるかどうかはみなさんが協議して決めることで、ボールは向こうにある」と突き放す。

 「2市がクリアできる条件を聞きたい」(松戸市)との声もあるが、調整役がいない中で県案を前提とした協議のめどはたたない。5日の会合では、自衛隊施設や元学校に分散
して置く提案も出たという。

 ある市の担当者はため息をつく。「2市の合意が得られたとしても、あくまでも一時保管。もうちょっと長期にわたって保管できないと除染を先に進めることができないのに、最初からこれではね」

◆流山が中間処理施設

 行き場がなくなった焼却灰を仮保管している流山市は、焼却場内に自前で中間処理施設の建設を始めた。灰を薬品処理し、セメントでピンポン球ほどの大きさに固める。より安全で扱いやすくすることで、難航している最終処分場探しを前進させたいという。

 施設は約1億円をかけて建設。3月に試運転、4月に本格稼動の予定だ。

 これまでは年間約1300トン発生する焼却灰の3分の2を秋田県小坂町の最終処分場で埋め立て、残りは北九州市の産業廃棄物処理会社に再生処理を依頼してきた。小坂町で処理する灰は、秋田県大館市の施設で薬品を使い重金属を閉じ込める処理もしていた。

 だが、7月に灰から国基準の3・5倍の放射性セシウムが検出されると両市町から受け入れを断られ、搬送中の灰も送り返された。

 放射性物質が蓄積しやすい草や枝の焼却をやめるなどして濃度は9月末に国基準以下に。しかし、受け入れ先は見つからず、焼却場内に仮保管している灰は11日時点で672トンと満杯に近づいている。「処分場探しは、流山というだけで敬遠される」という。