避難指示解除後の福島県浪江町:現地視察【復興支援会議】

日 時:2017年6月25日(月)~26日(火)

訪問先:福島県浪江町

主 催:新建東日本大震災復興支援会議

『現地視察報告書』を掲載しました。

視察行程<予定>

/25(月)

*視察団福島着

*間野マイカーで二本松に移動 *昼食(安達道の駅or石内団地浪江レストラン)

■視察1)①安達運動場仮設住宅、②石内復興公営住宅団地、③新町なみえ住宅開発

■ヒアリング1)1500浪江町商工会長・新町なみえ 原田雄一氏 at新町なみえ事務所

*福島に移動 ホテルで一服

*浪江町職員懇親会(金山、近野氏)1830<未定>

 

/26(火)

*ホテル発0830 *R114通過 

■視察2)帰還困難区域 下津島(立ち寄り)

■ヒアリング2)1030 浪江町行政区長会会長・権現堂行政区長会会長佐藤秀三氏 at佐藤氏自宅

■視察3)イノシシ被害宅(?)など中心市街地

*昼食:まち・なみマルシェ(仮設商業施設)

■ヒアリング3)1330浪江町役場 企画財政課 野村佳祐氏 at 役場

■視察4)1500中心部(災害公営住宅他)~請戸

*浪江発~福島発(解散)

 

『避難指示解除後の福島県浪江町の現地報告書』

避難指示解除後の浪江町_現地視察報告170925-26.pdf
PDFファイル 6.7 MB

 

もくじ

 

はじめに 鎌田一夫 … 5

 

1. 浪江町の被害と復興
浪江町の被災とこれまでの動き 浅井義泰 … 6
本格復興期に入った浪江町の現状を概観する 三浦史郎 … 8

 

2. 帰還に向けた町内の取組み
中心市街地の状況 浅井義泰 … 11
町内の再建を目指して 佐藤隆雄 … 13
町内での居住地の形成 渡辺政利 … 16
津波被災地の復興/計画と現状、そして将来 鎌田一夫 … 18
町民の思い 帰還できる条件を整え、人が住んで再生を進める 浅井義泰 … 20

 

3. 町外での暮らしを支える
安達運動場仮設住宅と被災者の現状 浅井義泰・鎌田一夫 … 21
町外での居住地の形成 新井隆夫 … 23
商業の復興と町外コミュニティ 乾 康代 … 25
案内役より、新建への期待を込めて 間野 博 … 28

 

おわりに 乾 康代 ….29

 

はじめに

このレポートは、新建築家技術者集団・災害復興支援会議(旧称:東日本大震災復興支援会議)が2017年9月25・26日に行った福島被災地(浪江町)の視察報告です。
新建の復興支援会議は東日本大震災直後に設立され、専門家による支援活動の活性化を目的とし、全国の新建会員や建築家技術者と被災地を結ぶ活動をしています。その活動の一環として、支援団や視察団を組織して東北の多くの被災地を訪れてきました。福島に関しては、2012年の「建まちセミナー/仙台」では、浪江町を主対象として<原発事故で何が起きているか>をディスカッションし、深刻な事態を共有しました。さらに、2015年には「建まちセミナー/福島」を開催。一般には入れない原発事故被曝地の現実を、多くの会員が目の当たりにするという貴重な現地視察を行いました。
このように新建は被災地福島に注目し、何が支援できるかを考えてきました。そのなかで、今年3月の準備区域の全面避難指示解除は注目すべき動向です。予想された通り、ほとんどの人が戻れない、戻らないという状況での避難指示解除は何をもたらしているのか。何はともあれ、現地で直接見聞しようというのがこの視察の「出発点」です。
災害とは、地震や津波、洪水といった天変地異を原因とし、人間社会の被害を結果とするものです。2011年に東日本を襲った天変地異は千年に一度といわれる巨大なものでした。それでも、条件や対応によって被害に差が出てきます。その差に学び、被害を抑えようというのが防災や減災です。一方、天変地異の程度に比べ被害が余りに大きいと、人的な原因による人災に近くなります。災害の中に存在する人災を峻別するのは難しいところもありますが、原因と責任を明確にすることは被害の抑制につながります。
今回の原発事故は明らかに人災です。地震や津波で原子炉そのものが破壊された訳ではありません。外部電源や予備電源が作動せず、電源に依らない注水に失敗し、炉の温度制御が出来なくなったからです。想定外だったのは地震や津波ではなく、核分裂のコントロールだったのです。スリーマイル、チェルノブイリ、福島――引き金が人為ミスでも天変地異でも、制御不能に陥る未熟な技術なのです。
東北各地の被災者の方々は、何でこんな目に合うのだという気持ちを押し殺して再生に向かっています。そこには、少しオーバーですが、天変地異をもたらす大自然と向き合う小さな人間の大きな意志を感じます。しかし、原発事故被災者の方は人災なるが故に、何でこんな事にという悔しさを抑え切れないでしょう。加えて、廃炉処理での事故や高線量地に隣接しているため、追加被曝の危険が付きまといます。
被災者が、住み慣れた土地でそれまでに築いた基盤を基に生活と生業を再建したいと願うのは当たり前のことですが、原発事故被災地では元の地に戻るということ自体が困難なのです。住民の考え方も様々で、行政に対する評価・反応にも差異が生じます。原発事故の処理(原因解明、責任と賠償、原発政策の転換)をないがしろにしたまま早期帰還を促す国の方針に振り回され、現地では深刻な問題に直面していると言われています。短期間の視察ですが、その問題をどこまで掘り下げ得るかがこの視察の「目標点」です。
今回見聞してきたことを参加者が分担してこのレポートをつくりました。多くの人達と福島の厳しい状況を共有するのが目的ですが、この視察でお世話になった方々、丁寧に対応して頂いた住民や役場に方々への感謝とお礼の印でもあります。とりわけ、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任教授の間野博さんには対象地の選定や行程、ヒアリング相手の調整まで全て手配して頂きました。心より感謝申し上げます。また、先年の「建まちセミナー」では、福島大名誉教授の鈴木浩さんにご尽力頂きました。
支援会議の活動にご協力下さった方々に、改めてお礼申し上げます。

新建災害復興支援会議 鎌田一夫

 

資料 空間線量図、まちづくりイメージ鳥観図(クリックで拡大)